革好きの皆さんなら、一度は聞いたことがある「ゴートレザー」。
山羊革(ゴートレザー)とは、大人の山羊から作られる革で、軽くて丈夫で型崩れしにくい特徴を持っていることから、軍用ジャケットやベルトなどにも使われています。本日は、このゴートレザーの特徴や種類、お手入れ方法について解説します。
山羊革(ゴートレザー)とは?
山羊革(ゴートレザー)は大人の山羊から作られる革です。「ゴートスキン」と呼ばれることもあります。
山羊革(ゴートレザー)は軽くて丈夫で型崩れしにくい特徴があることから、財布やバッグ、ベルトやレザージャケットなど多くの革製品の素材に使われています。
特に有名なのが米海軍が愛用していたフライトジャケットのG-1です。このジャケットは、1940年代にアメリカの海軍航空隊によって開発されました。本体のメイン素材に山羊革(ゴートレザー)が使われています。
さらに同じ時期に流行ったバードウォッチングなどのアウトドアスポーツでも、山羊革(ゴートレザー)製のレザージャケットが人気だったそうです。頑丈なのに薄手で動きやすい山羊革(ゴートレザー)は、さまざまなシーンに重宝されていたんですね。
山羊革(ゴートレザー)と牛革の違い
一般的に牛革(カウレザー)は皮革のなかでも厚く、強度と耐久性があります。しかし山羊革(ゴートレザー)はその牛革(カウレザー)を上回る強度があると言われています。
さらに、牛革(カウレザー)は厚くどっしりとした重みがありますが、山羊革(ゴートレザー)は軽く、革の厚みは牛革(カウレザー)の半分ほどしかありません。
山羊革(ゴートレザー)と羊革の違い
山羊革(ゴートレザー)と羊革(シープスキン)の大きな違いが強度です。繊維密度は羊革(シープスキン)のほうが荒めで、山羊革(ゴートレザー)は密度が高く頑丈です。
ちなみに羊革(シープスキン)の荒い密度の繊維にはメリットもあります。繊維同士の隙間に空気をたくさん含むため、保温性に優れています。寒さが厳しい地域を中心に、防寒衣料の素材に重宝されています。
山羊革(ゴートレザー)の特徴
山羊革(ゴートレザー)は強くやわらかいため、本革製品をあまり使ったことのない方にもおすすめの革素材です。
とにかく強く、型崩れしない
山羊革(ゴートレザー)の大きな特徴は強度です。触ると固く、ゴムのように押し返す弾力があります。また、摩擦や型崩れにも耐えられるタフさを持っています。この性質を活かしてさまざまな革製品に活用されています。
薄くて軽く、やわらかい革質
強靭性がありながら、革自体はとても薄く手触りもやわらかいです。前述のとおり牛革の半分ほどの薄さしかなく、伸縮性もあります。毎日持ち歩く財布やバッグなど、極力軽いものが良い方には、山羊革(ゴートレザー)製品はぴったりです。
美しい自然なシボ
さらに特筆すべきは、きめ細やかな美しいシボです。細かくきれいなシボが革表面に浮き上がり、革本来の繊細な美しさを醸し出しています。牛革はシボを出すために、製造工程で革を収縮させるシュリンク加工をするのが一般的です。しかし山羊革(ゴートレザー)はシュリンク加工をすることなく、自然にシボが出ます。この細やかなシボは、見た目が美しいだけではなく、傷が目立たないメリットもあります。
経年変化(エイジング)
シボは山羊革(ゴートレザー)独自の美しい経年変化ももたらします。シボの溝の色が濃くなって立体感が増し、革表面の艶が深まって色が抜けてきます。
革自体を使えば使うほどやわらかく、しなやかになります。やわらかくなりつつも型崩れはしづらいので、毎日愛用しながらエイジングを楽しめます。
山羊革(ゴートレザー)の種類
山羊革(ゴートレザー)には、ゴートスキンとキッドスキンの2種類があります。
ゴートスキン
生後半年以上の大人の山羊からできるものを「ゴートレザー」、もしくは「ゴートスキン」と呼びます。密度の高い繊維のおかげで、薄くても傷がつきにくい強靭性が特徴です。
キッドスキン
「kid(キッド)」とは、生後半年以内の「仔山羊」を指します。山羊革(ゴートレザー)に比べて、革の繊維密度が細かくなっています。細かい繊維のため、染色加工をするとしっかりと浸み込んで美しく発色します。希少性が高く高級革として扱われています。
山羊革(ゴートレザー)のお手入れ方法
山羊革(ゴートレザー)の普段のお手入れは、乾いたやわらかい布で表面のほこりを落とす程度で十分です。
革表面が乾燥してきてパサつきが気になってきたら、クリームで保湿しましょう。
頻度は1、2ヵ月に1度ほどでOKです。頻繁にクリームで保湿してしまうと、革の内部に必要以上に水分が溜まり、シミやカビの原因になってしまいます。
まずブラシで軽く表面のほこりを落とします。ブラシは毛が細くやわらかい馬毛のブラシを使いましょう。
そのあと、やわらかいクロスの先に革用のお手入れクリームをつけ、少しずつ革表面に伸ばしていきます。艶を出すワックスや乳化性クリームよりも、水分が多くシミになりにくいデリケートクリームがおすすめです。
デリケートクリームの成分のほとんどは水分でできており、ワックスや乳化性クリームのようにロウが含まれていません。そのため、革表面に塗ったときのロウ特有の艶や光沢感は出ません。
かわりに、ロウでコーティングすると浸透しずらい水分や油分を、革の内部までしっかりと行きわたらせることができます。乾燥した革に潤いを与えるのにぴったりのクリームです。
クリームを塗ったら、日陰でしばらく乾かせばお手入れは完了です。革は熱に弱いため、直射日光に当てたり、ドライヤーをかけたりすることは絶対に避けてください。
また、山羊革(ゴートレザー)もほかの革と同じく水に弱いです。雨などに濡れてしまったら、すぐに乾いた布で水分を拭きとるようにしてください。
まとめ
海外では、山羊と同じつづりの「GOAT(G.O.A.T)」というスラングがあります。これは「Greatest Of All Time」の頭文字をとったもので、直訳すると「史上最高の」という意味です。「すごく素晴らしい!」「最高だ!」といったニュアンスで、音楽や映画作品、アーティストやスポーツ選手などを賞賛するときに使われます。
今回ご紹介した山羊革(ゴートレザー)の特徴を踏まえて、ぜひ自分にとって「GOAT」な山羊革(ゴートレザー)のアイテムを見つけてみてください。