はるか昔から行われていた染物の技法、「草木染め(草木染)」。合成染料(化学染料)の環境負荷が懸念される今、あらためて昔ながらの草木染めに注目が集まっています。今回は、草木染めの魅力をご紹介します。
草木染めの定義とは
草木染めとは、草木を煮だして作った染液で布や糸などを染めることを指します。草木の種類によっては、煮ださずにそのまま染めることもあります。
染める布は、綿(コットン)や羊毛(ウール)、絹(シルク)などが一般的です。綿や麻など植物繊維の布を草木染めするときは、まず元の布にタンパク質を染み込ませる下処理をします。こうすることで、タンパク質と草木の染液が反応し、色が染まります。
媒染(ばいせん)とは何?
草木染めで外せない作業工程が「媒染(ばいせん)」です。媒染とは、繊維にしっかり染料を定着させて、色止めする作業です。
媒染には、鉄や銅、アルミなどを使った媒染剤が使われます。アルミ媒染では、ミョウバンを使うこともあります。ミョウバンとは、アルミニウム・鉄が硫酸と結合してできた物質です。
媒染剤に浸すことで、媒染剤と草木の色素が化学反応を起こし、色止めの効果を発揮します。色落ちが抑えられるだけではなく、発色が美しくなります。ちなみに、同じ草木の染液でも、媒染液の金属の種類によって発色が変わります。
草木染めの歴史
草木染めの歴史はとても古いです。日本では、縄文時代から行われていたといわれています。最初は布の上に葉や花を乗せ、動物の血のタンパク質を使って色を定着させていたようです。
そのあと海外から染色の技術が渡来し、日本の草木染めの技術は発展します。しかし、明治時代にイギリスを中心とした欧米諸国から安価で鮮やかな色に染められる化学染料が輸入されたのを機に、草木染めは影を潜めました。
そして、また現代になり、環境問題などが取り沙汰されるようになって、改めて草木染めの技法に注目が集まっています。
草木染めの魅力
草木染めには、人工的な化学染料にはない魅力がたくさんあります。3つご紹介します。
経年変化がある
草木染めの大きな魅力の1つが経年変化です。日光や湿気、人の汗や皮脂、摩擦などのさまざまな要因により、少しずつ変化が起こります。例えば、ローズマリー染めをした布が、萌黄色から数年後には白っぽいベージュになったり、桜染めをした布が、数年後にはあざやかなサーモンピンクになったりします。
なお、同じ染液で染めても布製品の使い方によって出方は異なります。長く使ううちに色合いが変化するさまは、天然素材ならではの魅力です。
自然の色合いを楽しめる
一つひとつ自然な色合いを楽しめるのも大きなメリットです。化学染料なら一度に大量の製品を均一の色に染めることが可能です。一方、天然素材で染める草木染めは、同じ草木の素材でも、摘出時期や浸出時間などによって、一つひとつに個性がでます。
地球環境にやさしい
羊毛(ウール)やナイロンなどを染色するのに使用される酸性染料は、染色過程で重クロム酸塩を使うため、染色排水へのクロム流出が懸念されています。
一方で、草木染めはクロムのような薬品は使いません。自然にある草木を煮だして使うため、排水が水質汚染につながる可能性は限りなく低いです。
草木染めで使用される染料素材の種類
草木染めでは、さまざまな草木を染料として使います。特に有名なものをピックアップして、染まる色とともにご紹介します。
よもぎ(モスグリーン)
よもぎは、普段から河原や道端、公園などでよく見る多年草です。4月頃の新緑のよもぎで染めると、ほんのり黄色がかった萌黄色になります。5月頃のよもぎだと、より緑が深まった色合いを楽しめます。
矢車附子(茶色)
矢車附子(やしゃぶし)とは、日本の関東~西側に多く見られる落葉性小高木です。
矢車附子では、葉ではなく実を染料として使います。明治初期頃まで、お歯黒(おはぐろ)の化粧は、この矢車附子を塗って黒くすることもあったようです。矢車附子で染めると、すこし緑がかった濃茶色や黒い色がでます。銅媒染だと茶色に、鉄媒染だと黒になります。鉄媒染で黒くするときは、何度も染め重ねて少しずつ黒を深めていくため、手間がかかります。
たまねぎ(黄色)
たまねぎの皮を煮だした染液で染めると、美しい黄色~オレンジがかった茶色の染物ができあがります。
黄色になるのは、たまねぎに含まれるポリフェノール「ケルセチン」によるもので、特にたまねぎに多く含まれています。
コーヒー(うす茶色)
コーヒー豆をすり潰してお湯と一緒に煮だすことで、コーヒー染めの染液ができあがります。ちなみに、コーヒー豆の抽出回数によって、ベージュからこげ茶色まで染め上がりの濃さが変わります。
藍(青色)
草木染めのなかでも、特に知名度があるのが藍染めです。藍染めでは、蓼藍(たであい)という植物を使います。蓼藍に含まれる物質「インディカン」は、酸化するとインディゴ色素になります。このインディゴ色素が、藍染め特有の深く美しい青色を生み出します。
クチナシ(カーキ色)
梔子(クチナシ)の草木染めも、昔から行われていた方法の1つです。クチナシには、カロチノイドの一種「クロシン(クロチン)」が含まれています。クロチンは黄色い色素で、サフランのめしべにも含まれています。サフランライスが黄色いのもクロシンによるものです。クチナシは、おせちの栗きんとんや、たくあんなどを着色するのにも使われています。クチナシで草木染めをすると、黄色や、少し緑がかったカーキ色のような色味がでます。
CRAFSTOが提供する草木染めの製品について
CRAFSTOでも、草木染めの素材を使用したオリジナル製品を揃えています。廃棄予定のりんごの皮をアップサイクルした「アップルレザー」に、オーガニックコットンを合わせたサステナブルなオリジナルシリーズです。
カーキはクチナシで染色したもので、ブラックは矢車附子で染めたものになります。
矢車附子染めでは、藍染めで下染めした上から、矢車附子の染液で何度も繰り返し染め重ねます。鉄で媒染を繰り返すことで、だんだんと深く美しい黒になるのです。
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